人の命に直結し、緊急性が高い医療の現場では「報告」がとても重要です。
できるだけ早く、重要なことを分かりやすく、漏れなく伝える必要があります。
でも「簡潔明瞭」に報告するって本当に難しいんですよね。
特に新人看護師さんは「報告が苦手」って人も多いのではないでしょうか。
いや、看護師を何年してても報告は緊張します。
報告相手が怖いドクターだったら尚更です。
そこで今回は、報告の苦手意識を払拭するために、「SBAR」というツールをご紹介したいと思います。
SBAR法とは
看護の現場で使われている報告の手法の1つで、“状況・背景・評価・提案”の頭文字をとって「SBAR(エスバー)法」と呼ばれています。
もともとはアメリカ海軍が潜水艦内での情報伝達手段として使っていたツールだそうです。
最近では、コミュニケーションエラー防止のために“Identify(報告者・対象者の同定)”と”Confirm(復唱確認)”が追加された「I-SBARC」が用いられてきています。
I 報告者・対象者の同定(Identify)
S 状況・状態(Situation)
B 背景・経過(Background)
A 評価・判断(Assessment)
R 提案・依頼(Recommendation)
C 復唱確認(Confirm)
SBARを使い方・注意点
Identify:報告者・対象者の同定
自分がどこに所属している看護師なのか、どの患者のことを報告したいのか一番最初に伝えましょう。
ドクターは、他の病棟や外来でたくさんの患者さんを担当しています。
また当直で患者さんのことをまったく知らないということがあるので、電話でパッと名前を言われただけでは分かりません。
Situation:状況・状態
患者さんに起こっている状況を簡潔に伝えましょう。
緊急性の高い情報を先に伝えるようにしましょう。
Background:背景・経過
状況を理解するのに必要な情報(今回の出来事の経過、入院理由、手術や治療の内容、バイタルサイン測定値、使用している薬剤、既往歴など)を伝えましょう。
たくさん伝えたいことはありますが、要点を手短に。
Assessment:評価・判断
自分の評価(判断)をはっきりと伝えましょう。
どういった点を問題と考えたのか、どうなっていると考えたのかを伝えます。
Recommendation:提案・依頼
医者にどうしてほしいのか、提案・依頼をしましょう。
Confirm:復唱確認
口頭指示が出たらしっかりとメモを取り、指示内容を復唱・確認しましょう。
I-SBARCの具体例
実際にI-SBARCを使ってみましょう!
夜勤帯で当直医師に電話で報告するところを想定しました。
Identify 報告者・対象者の同定 |
「7階東病棟の看護師○○です」 「◇◇先生の患者さんで、710号室の●●さんについてです」 |
Situation 状況・状態 |
「夕食後に突然胸痛を訴え、心電図をとったらST上昇しています」 |
Background 背景・経過 |
「狭心症疑いで入院し、○月●日に心臓カテーテル検査予定の患者さんです。」 「血圧140/82、脈拍は110、SpO2は94%です。今も胸不快感が持続しています。」 |
Assessment 判断・評価 |
「入院時の心電図と比較して、II・III・aVfでST上昇を認めます。下壁梗塞の可能性があると考えられます。」 |
Recommendation 提案・依頼 |
「すぐに診察をお願いします」 「酸素開始しますか?」 「採血とルート確保の準備をします」 |
Confirm 復唱確認 |
「ラクテックでルート確保、酸素2L開始ですね」 |
さいごに
私も「報告が苦手」です。
少しでも分かりやすく報告できるように、普段からリーダーや上司に報告するときでもSBARを意識して報告するようにしています。
「結局何がいいたいの?」とか、言われちゃったら悲しいですもんね。
「報告」が苦手な看護師さんはぜひSBARを活用し、相手に確実に伝えるコミュニケーションを意識してみてください。
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