「呼吸療法認定士」の資格をご存知でしょういうか?
年々受験者数も増え、看護師だけではなく理学療法士や作業療法士・臨床工学技士の人の取得も増えています。
今回は呼吸療法認定士でもある私が、資格についてや実際にかかる費用などを説明します。
呼吸療法認定士とは
正式には、日本胸部外科学会・日本呼吸器学会・日本麻酔科学会の3学会が創設した認定制度で【3学会合同呼吸療法認定士】といいます。
高齢社会となってきている今の医療現場では、患者さんに対する呼吸療法(吸入療法、酸素療法、呼吸理学療法および人工呼吸など)が重要となります。
しかし実際の医療施設では、呼吸療法の技術を持った医療人材が少ない状況が課題とされていました。
そこで3学会が共同で、看護師、准看護師、臨床工学技士、理学療法士、作業療法士など、それぞれの職種において呼吸療法を習熟し、呼吸管理を行える医療人材のレベルの向上と維持を目的として、資格として認定することになったのです。
呼吸療法認定士になるには
呼吸療法認定士になるためには、
- 東京で行われる認定講習会に参加
- eラーニングを受講
上記のどちらかを受講し、試験の受験資格を得なければなりません。
認定講習会を受講して受験資格が得られた方のみ、呼吸療法認定士の認定試験を受けることができます。
受験資格となる認定講習会に参加するには、2つの条件が必要
そもそも認定講習会を受講するためにも、2つの条件が必要です。
条件1:資格および年数
まず下記の資格、および年数をクリアする必要があります。
看護師 2年以上
准看護師 3年以上
臨床工学技士 2年以上
理学療法士 2年以上
作業療法士 2年以上
条件2:学会や講習会への出席
認定委員会が認める学会や講習会に出席し、12.5点以上を取得した者。(申請書類提出日から過去5年以内)
申し込みから受験までの流れ
上記の2つの条件をクリアした人は、認定講習会に申し込むことができます。
申し込みから受験までの流れをみていきましょう。
Emailを登録して、書類作成フォームの案内を受け取る
3月中に申請用紙をダウンロードし、書類を作成する
4月に認定講習会の申し込みをする
8〜9月に認定講習会(会場またはeラーニング)を受講する
11月に東京で試験を受ける
このような流れになります。
じつは、4月の認定講習会の申し込みが、試験を受けれるかどうかの命運を左右します。
というのも、認定講習会は定員が決まっており、申請書類の先着順となっているからです。
呼吸療法認定士の試験について
試験は筆記試験のみで、140問(午前70問、午後70問)のマークシート方式(5者択一問題)となっています。
新型コロナウイルスの影響で、2021年の試験は12月に延期、また問題数100問と少なくなりました。
出題範囲は、講習会及びテキストと呼吸療法に関する業務全般とされていますが、かなり広いです。
最近は臨床場面を想定した状況設定問題や、応用問題の出題が増えてきています。
私が受験したときも、状況設定問題に計算式を使う問題が組み込まれており、とても難しく感じました。
受験者数は例年4500人前後で、合格率は約60%前後と言われています。
呼吸療法認定士の取得にかかる費用はどのくらい?
資格取得にはなにかとお金がかかりますよね。
呼吸療法認定士になるためにかかる費用は、最低でも4〜5万円と高めです。
だけどこれは、東京周辺の関東在住の方限定。
地方在住の方はさらに高いお金がかかる人が多いので、詳しく説明していきますね。
最低でもかかる費用は4〜6万円前後
最低限かかる費用の内訳は以下の通りです。
認定講習会の受講料 :20,000〜30,000円
認定試験の受験料 :10,000円
合格後の認定登録料 :3,000円
最低でも38,000〜63,000円ほど、お金がかかる計算になります。
地方在住の人は交通費や宿泊費もかかる
呼吸療法認定士になるためには東京に行く必要があります。
関東在住以外の人は宿泊費や交通費がかかるので、とても大きな出費です。
試験で東京に一泊する人の例として、
交通費(新幹線や飛行機など):往復 約30,000円
宿泊費:ホテル1泊 約5,000〜8,000円
食事などを含めたら4万円くらいかかるとみておいた方がいいでしょう。
認定講習会を東京会場で受講する方は、もっと費用がかかります
最低かかる費用と交通費や宿泊費を合わせたら、合計8〜10万円となります。
もちろん、格安の飛行機を利用したり、東京の友達の家に泊まらせてもらうなど費用を抑える方法はあります。
また病院によっては、資格取得のための費用として一部負担してくれるところもあるようです。
呼吸療法認定士は5年ごとに更新が必要
呼吸療法認定士の試験に合格したら「呼吸療法認定士認定証」が交付されます。
認定証には有効期限があり、5年ごとの更新が必要です。
なぜならこの資格は、認定者の呼吸療法のレベルアップや生涯学習の促進を図ることが目的とされているからです。
更新のためには、定められた講習会や学会への参加・論文の発表などで、総得点50点以上を取得する必要がありがあります。
更新に必要な点数取得や更新期間など、詳しくは「認定更新申請手続きについて」をご確認ください。
呼吸療法認定士になってメリットはある?
呼吸療法認定士を取得することで「なにか医療行為ができるようになる」ということはありません。
しかし、私が資格を取得したうえで感じたメリットがいくつかあるので紹介します。
呼吸療法の知識がつき人工呼吸器などの苦手意識が減った
合格に向けてもう勉強するので基礎知識を再確認することができました。
また知識が増えるにつれて苦手意識のあった人工呼吸器に対し、抵抗が少なくなりました。
信頼を得ることができる
「呼吸療法認定士を持っている」という権威性ができることで、師長や同僚からの信頼を得ることができます。
呼吸ケアチーム(RCT)に任命されて、院内勉強会を主催したり呼吸器を使っている病棟をラウンドしたりもしました。
また後輩指導に自信が持てるようになったなど、臨床で働くうえで多くのメリットがあり、スキルアップに繋がりました。
大半の病院は、資格を取ることでお給料が大きく上がる、ということは期待できません。
しかし学会が独自でおこなったアンケートによると、一部の病院では「お給料が上がった」「昇任した」などの優遇があるケースもあるようです。
転職するときに履歴書にかける・自己PRできる
転職する際には履歴書の資格の欄に記入できますし、自己PRにもなります。
また呼吸器系や循環器、ICUなどがある病院では、資格を持っていることで評価されて採用時に優遇されるケースもあるようです。
さいごに
呼吸療法認定士になるためには、時間も手間もお金もかかります。
だけど合格したときの喜びは、とてつもなく大きいです!
自分のスキルアップや勉強のモチベーション維持にも繋がりますし、なんといっても自分に自信を持てるようになります。
呼吸療法認定士に興味を持たれた方は、ぜひ取得を目指してみるのはいかがでしょうか。
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